私は普段、Sony α7Ⅲとα7Ⅳというカメラを使って子供たちの写真を撮っています。このSony αシリーズというカメラはSony純正のレンズ以外にもTAMRONやSIGMAといったサードパーティーレンズ(純正以外のレンズ)が使用できます。※サードパーティーレンズの詳しい説明はこちらの記事で紹介しています。【サードパーティー製レンズはあり?なし?】
なので、普段のキッズフォト撮影には以前も紹介したTAMRONの大三元レンズ(F2.8の明るいズームレンズ)をメインに使っています。※レンズ名をクリックでレビュー記事にリンク
- TAMRON 20-40mm F/2.8 Di III VXD A062: 広角~標準のちょっと変わったズーム域、子供との距離の近い室内での撮影に便利
- TAMRON 28-75mm F/2.8 Di III VXD G2 A063: 幅広いシチュエーションで使える標準ズーム、1本だけ使うとしたらこのレンズ
子供が小さいうちは遊びに行っても子供から離れることが無いため、これまではこの2本でほとんどのシチュエーションに対応できていました。しかし、子供の成長にともなって公園などで子供から少し離れることができるようになり、最近は望遠ズームの出番が増えたので、今回はTAMRON 70-180mm F/2.8 (A056)についてレビューします。
「70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2 (A065)」の開発も発表されたので、G2との比較、G2への期待なども検討します。
TAMRON 70-180mm F/2.8 Di III VXD (A056)とは
TAMRONから販売されるF2.8通し望遠ズームレンズです。F2.8通しの広角ズーム、標準ズーム、望遠ズームの3本セットで俗に大三元レンズと呼ばれるレンズの1本になります。
カメラメーカー純正大三元レンズの望遠ズームレンズは20万円台後半~30万円台前半と非常に高価ですが、このレンズは12万円程度と純正の半額で購入できます。
レンズのスペックを【Sony FE 70-200mm F2.8 GM OSS II】や【TAMRON 70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2 (A065)】と比べてみましょう。
メーカー | TAMRON | SONY | TAMRON |
モデル名 | A056 | SEL70200GM2 | A065 |
焦点距離 | 70-180mm | 70-200mm | 70-180mm |
明るさ | F2.8(最小絞りF22) | F2.8(最小絞りF22) | F2.8 |
手振れ補正 | 非搭載 | 搭載 | 搭載 |
スイッチ類 | なし | フォーカスボタン AFモード切替 手ブレ補正モード切替 など | フォーカスボタン? モード切替? |
最短撮影距離 | ズーム全域0.85m | (広角)0.4m /(望遠)0.82m | (広角)0.3m /(望遠)0.85m |
フィルター径 | 67mm | 77mm | 67mm |
長さ×直径 | 149mm×81mm | 200mm×88mm | 156.5mm×??mm |
重さ | 810g | 1045g | 855g |
レンズ | 14群19枚 | 14群17枚 | ?群?枚 |
マウント | Eマウント (フルサイズ) | Eマウント (フルサイズ) | Eマウント (フルサイズ) |
価格 | 定価165,000円 (実売:約124,000円) | 定価363,000円 (実売:約325,000円) | 定価???円 (実売:???円) |
発売日 | 2020年5月 | 2021年11月 | 2023年?月 |
大三元望遠ズームの焦点距離は通常【70mm-200mm】ですが、TAMRON A056は【70mm-180mm】と望遠側を20mm短くすることで、非常に小型軽量なレンズとしています。
TAMRONのF2.8ズームレンズ、28‐75mmG2や20‐40mmと大きさを比較してみましょう。
左から順に70-180mm,25-75mmG2,20-40mmです。F2.8通しの望遠ズームにも関わらず、F2.8標準ズーム(28‐75G2)より少し大きい程度なんて、一眼レフ時代には考えられないくらい小型になりましたね。SONY70200GM2と比べたら5cm短くて、200g軽いなんて・・・。
ちなみに、レンズ最長時で比較するとこんな感じ。
また、望遠ズームでは搭載されていることの多いレンズ内手振れ補正機能も非搭載、カスタムスイッチなども一切ありません。
望遠側の焦点距離20mmマイナス、手振れ補正機能、スイッチ類など余分な機能を削り、必要最低限の機能に絞ることで純正レンズの半額以下と大幅な低コスト化を達成しているレンズです。
純正レンズか?TAMRONレンズか?
SONY純正の場合、SONYでは最も高価なGmasterレンズ(GMⅠまたはGMⅡ)を選ぶしかありません。GMⅡは価格は30万円以上してしまいますがでGMⅠより30%近く軽量化され、最高の高額性能ととろけるようなボケ味が得られます。そして1.4倍、2倍のテレコンが使用できるので最大で400mm、F5.6のレンズとして使用できます(APS-Cクロップすれば600mm)。
他のズーム域のレンズではサードパーティレンズもかなり有力候補でしたが、F2.8の70-200(180)mmの望遠ズームにおいては、予算さえ許すのであればGMⅡ一択です。
ではTAMRONの70-180mm(A056)は全然ダメなのかと言うと、そんなこともない。
私の場合、「望遠レンズを多用はしない(したがって安い方が良い)」「子連れなので少しでも軽くて小さい方が良い」という理由からTAMRONの70-180mm(A056)を選びました。
焦点距離70mm以上の中望遠~望遠レンズはかなり画角が狭く、被写体との距離が必要なのでキッズフォトでは出番が多い焦点距離ではありません。しかも、私の場合はSIGMAの100‐400mmを持っているのでキッズフォト以外で望遠を使う場合にはSIGMAの方を使ってしまうシーンも多くなります。
自分の使用頻度から考えると30万円以上のコストをかける焦点距離では無いかな・・・というのが私がこのレンズを選んだ大きな理由です。
先ほども説明したTAMRON A056のスペックや特徴ごとに比べてみましょう。
望遠側の焦点距離が20mm短い(180mm)
この点についてはさほど気になりませんでした。広角と比べて望遠側で感じる焦点距離の差は小さく、200mmと180mmの差はそれほど大きくないこと、そしてAPS-Cクロップ(1.5倍)も含めれば十分な焦点距離であることが理由です。
レンズ内手振れ補正がない
これについても、α7シリーズはボディ内手振れ補正があるためそれほど重要と感じませんでした。特に私の場合は子供を撮影するためシャッタースピード1/250以上で撮影することが多く、望遠180mmであっても手ブレの心配はありませんでした。
レンズにスイッチ類がない
カジュアルな撮影が多く、流し撮りなどもしないので、これもほとんど気になりませんでした。
この点は激しい動きのあるスポーツや動物を撮る場合、特に撮影中のシャッターチャンスが限られていて瞬時に設定を変える必要がある人だと不便に感じるポイントかもしれません。
肝心の写りは?
フルサイズEマウントのTAMRONレンズはどれも写りが良く、スタンダード機で使う分には十分な性能です。高画素なRシリーズやフラッグシップ機で使えばGMレンズとの差を感じるでしょうが、α7Ⅳの普段使いで問題を感じたことは全くありません。
実際に広角側と望遠側の作例を見てみましょう。
まずは広角端70mm
α7Ⅳ,70mmF2.8,1/1250秒,ISO100
ピントの合ったヒマワリ部分は花びらの一枚一枚、中央のおしべめしべの一つ一つがくっきりと解像しています。前後のボケ味も自然な感じで好印象です。
同様に望遠端180mm
α7Ⅳ,180mm,F2.8,1/500秒,ISO3200
雨天でややうす暗いのですが、動物瞳AFもしっかり効いています。ピント面では毛の1本1本、ひげの先端までくっきり解像しており、濡れた枝の質感もよく伝わります。広角同様に前後のボケ味も自然です。
広角、望遠ともにF2.8通しのレンズらしい綺麗な写りをしており、特に書くほどの欠点がないほどの写りです。
TAMRON 70-180mm F/2.8 Di III VXD (A056)の性能に満足
このように十分綺麗な写りが得られて、標準レンズよりちょっと大きい程度で望遠ズームとしては非常に小型軽量、そして価格も10万円前半で手が出しやすいことを考えると、私は純正GMレンズではなくTAMRON 70-180mm F/2.8 Di III VXD (A056)を選んだことに後悔はなく、非常に満足しています。
確かに多機能ではないけれど、十分綺麗な写真が普通に撮れて10万円ちょっとならこれでいいじゃん!って感じです。
実は、「望遠ズームは使用頻度が・・・」とか書いてましたが、実際このレンズを買ってからはかなりヘビーユースしてます。
子供が少し大きくなってきて離れられるようになったのも大きいですが、中望遠域でのF2.8はボケが気持ちいいし、背景が整理しやすいのでお気に入りの写真を量産できるんですよね。
あと、GMレンズほど大きくない、そしてレンズ鏡筒が白くないのは撮影時に悪目立ちしないので、周囲の目が気にならないのは地味に重要です。
子連れお出かけスポットで撮影することが多いので、正直あまりガチすぎる機材は構えにくいです・・・。
パパママ同士って周りに気を配って立ち回るので、デカくて白いレンズ構えてたら目立つんですよね・・・。
無理やり不満点や欠点を挙げるなら
本当に満足しているレンズなんですが、強いて挙げるのであれば「テレコンが使えない」「AF性能」の2点はスタンダード機でも明確に影響する短所であると思います。
テレコンが使えない
私の場合は1.5倍クロップでも十分ですし、より望遠が使いたいときはSIGMA100‐400mmがあるので不満ではないですが、人によっては「純正レンズを選択するべき」となる大きなポイントだと思います。
SONYとの契約上、サードパーティ製はテレコン対応が不可能なのでどうしようもないポイントです。
AF性能
これは多くのSONY純正レンズとサードパーティ製レンズで言えることですが、最新のカメラの高速で高性能なAF機能を最大限に発揮できるのはやはり純正レンズです。
とは言え、激しいスポーツシーンや野鳥撮影を専門としなければその差を体感することはあまりないと思っています。
そしてこのレンズはVXDというリニアモーター駆動のAFを搭載しているため、TAMRONレンズの中では高速高精度そして静かなAF動作が可能なレンズです。
私レベルだとこのAF性能で不便に感じたことは無いのですが、先述の動きの激しい被写体を追いかける用途の場合は純正レンズの方が安心かなと思います。
ちなみに、TAMRONだとRXD(ステッピングモータ)とかOSD(DCモータ)のAFもあるんですが、少なくともVXD搭載のレンズでAF性能に大きな不満を感じたことはありません。
OSDのレンズに関しては明らかに動作が遅く、作動音も大きいので、すぐに売却してしまった経験があります。
TAMRON 70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2 (A065)開発発表
そんな大満足の70-180mm F/2.8 Di III VXD (A056)なんですが、8月9日に後継機のG2(A065) の開発が発表されました。
TAMRON公式リリース画像より
発表済みのG2の進化ポイントは、
- 光学設計を一新、光学性能が向上
- AF時の広角側最短撮影距離0.3m
- 手振れ補正(VC)を搭載
- AF機構(VXD)が進化、動体追従性能が大幅に向上
- TAMRON Lens Utilityに対応
さらに画像を見る限り3モード切替ができるカスタムスイッチが追加されています。
画像からは確認できないので推測ですがTAMRON Lens Utilityに対応するということはフォーカスボタンとタイプC端子も搭載されると思います。
28-75F2.8のレンズもG1(A036)からG2(A063)になって光学設計が一新し光学性能が大きく向上していました。70‐180mmG1(A056)の写りも十分なものでしたが、これがさらに向上するとなると非常に優秀な光学性能となるでしょう。
G1(A056)の広角側の最短撮影距離はAF時は0.85mで、MFでのみ0.27mまで寄ることができました。これがAFを使用時にも0.3mまで寄れるようになるということで、使い勝手が大きく向上するでしょう。
一番大きな進化ポイントが手振れ補正機能(VC)の搭載でしょう。コスト・大きさの面で省略されていたであろう手振れ補正機能を搭載したことで、シャッタースピードの遅くなる暗いシーンでも安心して撮影できるようになりました。しかもAF性能、特に動体追従性能も大幅に向上しているということなので、手振れ補正と合わせて激しい動きのあるスポーツシーンなどへの対応力が大幅に向上していることでしょう。当然、最新のSONYカメラの高性能AF機能の動作にも最適化されているはずです。
そして、「TAMRON Lens Utility」というレンズとPCをUSBタイプCケーブルで接続して操作リングやスイッチ類の機能切替などを設定できるソフトウェアに対応してきました。そのため発表はされていませんが先述のとおり、カスタムスイッチ、フォーカスボタン、タイプC端子が搭載されるでしょう。
これらの機能の進化によって、GMⅡとの違いとして挙げていたポイントのほとんどが改善され、GMⅡにより近づいたことになります。
それにもかかわらず、大きさや重量はG1(A056)から微増しただけで済んでいますから、かなり魅力的なレンズです。
問題は販売価格がどうなるか。
28-75mmのときはG1からG2に変わっても1万円程度の値上がりでした(G1の実売価格が下がったので実際の価格差はもう少しありましたが)。今回は手振れ補正機構の追加があるためもう少し値上げ幅が大きいかもしれないと予想しています。
とはいえ、Eマウントの望遠ズームレンズではSONYとTAMRONの人気が高く、SIGMAの望遠ズームレンズは正直そこまで人気がありません。SONYとは明確な価格差があるので、となると必然的に自社レンズが有力なライバルになってしまうわけですが。
現在、非常に人気のあるTAMRONの望遠ズームとしては【35‐150mm F2-2.8 VXD(A058)】実売18万円程度、【28‐200mm F2.8-5.6 RXD(A071)】実売7.7万円程度、【50-400mm F4.5-6.3 VC VXD(A067)】実売14.8万円程度といったレンズがあります。
焦点距離もF値も違うので一概には言えませんが、やはり【35‐150mmF2-2.8】とどちらを選ぶかがポイントかと思います。70‐180mmG1(A056)は実売12.4万円程度ですから、標準ズーム(28-75)と使い分けるならコスト優先で70‐180mm、広角側が35mmで十分でレンズ1本で済ませるなら少しコストが上がってでも35‐150mmと住み分けられていたと思います。
そのため、35‐150mmとの兼ね合いも考えると今回G2が値上げされても実売14万円台より高くことは無いんじゃないかなぁ、なんて期待しています。
まとめ
【TAMRON 70-180mm F/2.8 Di III VXD (A056)】は、私のような「スタンダード機を使用して、キッズフォトをメインに撮影する」という用途において、特筆する欠点は無く、大きさ重さ、価格、写りとAF性能で大変満足度の高いレンズでした。
ハイエンド機を使用する人や、動きの激しい被写体(スポーツ、野鳥など)を撮る人は予算さえ許せばGMⅡ一択になってしまいますが。
中望遠以上の焦点距離でF2.8を使ったボケ味の良い写真を撮れるのは大変魅力的でした。
と同時に、開発発表された【TAMRON 70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2 (A065)】への期待がいやがおうでも高まります。
G1(A056)でも十分なレンズなのですが、
むしろG1が良いレンズだったからこそ、
それより進化したレンズが14万円台より安ければ・・・。
正直、買い換えを強く検討してしまうところですね。
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