2023年10月12日、TAMRONから70-180mm F/2.8 Di III VC VXD G2 (Model A065)が発売されました~!このレンズは、先日レビューしたTAMRON 70-180mm F/2.8 Di III VXD (Model A056)の後継機となるレンズです。
「今から買うなら新型と旧型どちらにすべきか?」「すでに旧型を持っているけど新型に買い換えるべきか?」購入を悩んでいる方のために、旧型VS新型のレビューをしたいと思います。
旧型(G1)と新型(G2)の違いは?
どちらのレンズも、TAMRONから販売されるF2.8通し望遠ズームレンズです。F2.8通しの広角ズーム、標準ズーム、望遠ズームの3本セットで俗に大三元レンズと呼ばれるレンズになります。
通常、大三元望遠ズームの焦点距離は【70mm-200mm】ですが、TAMRONのG1(A056)やG2(A065)は【70mm-180mm】と望遠側を20mm短くすることで、非常に小型軽量な望遠ズームレンズになっています。
外観
まずは外観を比べてみましょう。左が旧型(G1、A056)、右が新型(G2、A065)です。
・正面(形状と質感)
旧型(左)は、鏡筒がまっすぐで、表面は完全なマット仕上げの非常にシンプルな見た目のレンズでした。
新型(右)は、ズームリングとピントリングの間にくびれがあり、表面は旧型よりもわずかに光沢のあるマット仕上げになっており、旧型よりもスタイリッシュな印象になっています。
この形状や表面仕上げは「28-70mmF2.8G2」や「20-40mmF2.8」など最近のTAMRONレンズで主流となっているスタイルです。
・フードを外した状態(大きさ)
レンズの大きさは、直径は旧型とほぼ同じですが、長さは旧型よりも約7mm長くなっています。
・最も伸ばした状態(フード付き)
この状態でも新型(右)の方がやや長くなっています。フード形状は旧型と同じですが、表面は鏡筒と同様にやや光沢のある質感になっています。
・スイッチ類
旧型(左)にはズームロックスイッチのみがあります。新型(右)には手振れ補正のモード切替スイッチ(カスタムスイッチ)と、フォースボタン(カスタムボタン)、そしてズームロックスイッチが付いています。
このカスタムスイッチ、カスタムボタンにはカメラボディやLens Utilityから任意の機能を割り振ってカスタムすることができます。
スペック
続いて、スペックを比べてみましょう。参考に【Sony FE 70-200mm F2.8 GM OSS II】のスペックも載せておきます。
新型になって旧型よりも向上したスペックに青線を引いています。
メーカー | TAMRON | TAMRON | SONY |
モデル名 | A065 | A056 | SEL70200GM2 |
焦点距離 | 70‐180mm | 70-180mm | 70-200mm |
明るさ | F2.8(最小絞りF22) | F2.8(最小絞りF22) | F2.8(最小絞りF22) |
AF | VXD(リニアモータ) | VXD(リニアモータ) | XDリニアモータ |
手振れ補正 | 搭載 | 非搭載 | 搭載 |
スイッチ類 | フォーカスボタン/ 手ブレ補正モード切替/ TypeC端子 | なし | フォーカスボタン/ AFモード切替/ 手ブレ補正モード切替 など |
最短撮影距離 | (広角)0.3m /(望遠)0.85m | ズーム全域0.85m | (広角)0.4m /(望遠)0.82m |
フィルター径 | 67mm | 67mm | 77mm |
長さ×直径 | 156.5mm×83mm | 149mm×81mm | 200mm×88mm |
重さ | 855g | 810g | 1045g |
レンズ | 15群20枚 | 14群19枚 | 14群17枚 |
マウント | Eマウント (フルサイズ) | Eマウント (フルサイズ) | Eマウント (フルサイズ) |
テレコン対応 | × | × | 〇 |
価格 | 定価195,800円 (実売:約148,500円) | 定価165,000円 (実売:約124,000円) | 定価363,000円 (実売:約325,000円) |
発売日 | 2023年10月 | 2020年5月 | 2021年11月 |
G2のスペック上の改良点をまとめると、
- 手振れ補正機構(VC)の搭載
- 光学設計の見直し
- 広角側の最短撮影距離が0.3mに向上
- より高速・高精度なAF
- TypeCコネクタを搭載し、Lens Utilityに対応
となります。
①手振れ補正機構の搭載
新型(G2)になって一番大きな変更点であり、旧型には無かった手振れ補正機構(VC)が搭載されています。望遠側180mmで手振れ補正の効きを試してみると、シャッター半押しで手振れがピタッと止まり、かなり強力に効きます。また、デフォルト設定では手振れ補正モード切替スイッチで①通常モード、②流し撮りモード、③フレーミング重視モードを切り替えることができます。
しかし、個人的には180mmではレンズ側の手振れ補正機能は必須では無いかなと思います。
というのも、手振れ以前に被写体ブレ(被写体が動くことで発生するブレ)を防ぐために私の場合はほとんどのシーンで1/125秒以上のシャッタースピードを使用しています。特に子供の写真を撮る場合は暗い場所でも1/250秒、明るい場所であれば1/500秒以上で撮影します。
そのため、ボディ内手振れ補正機能のあるα7シリーズでは180mm程度で手振れを心配したことはありません。
望遠側が400mm以上のレンズでは手振れ補正機能は必須ですが、
200mm以下の場合には、手振れ補正機能は「ついてる方が安心」といった程度です。
②光学設計の見直し
新型(G2)は、新設計の光学系を採用することで旧型よりも描写力が向上しており、MTFカーブを確認するとレンズ周辺部における描写性能が大きく向上しています。
果たしてその効果を実感できるのか?ちょっとした比較撮影をしてみました。
以下の写真はα7CⅡで旧型(G1)・新型(G2)のレンズを使用して撮影したのもです。ロスレス圧縮(L)で撮影し、lightroomを使ってレンズ補正のみ適用して現像したものです。
・広角70mmでの比較
広角側70mmでは、【F 2.8、SS 1/125秒、ISO 400、WB固定(4350K)】と【F 5.6、SS 1/30秒、ISO 400、WB固定(4350K)】で撮影しています。
※外観のときとは逆に新型(G2)が左、旧型(G1)が右になっています。ややこしくてすみません。
このままではほとんど違いがわからないので、拡大して比べてみます。
色味には新旧で差があり、旧型(G1)の方がやや白っぽい感じの色味で、新型(G2)は木の色味が自然な感じです。
解像感は・・・ん~、ほとんど違いがわからないですね。レンズ周辺部(手の辺り)を見るとG2の方が輪郭がわずかにくっきりしているよう見えるような、気のせいのような。
・望遠180mmでの比較
望遠側180mmも見てみましょう。同様に【F 2.8、SS 1/125秒、ISO 400、WB固定(4350K)】と【F 5.6、SS 1/30秒、ISO 400、WB固定(4350K)】で撮影しています。
やはり新旧で色味が違うのが目立ちますね。
まずはレンズ中央(胴体)を拡大してみます。
比較画像作成時にオリジナルより画質が少し低下しているのでわかりにくくなっていますが、動体右下の大きなささくれ(?)に注目してみてください。
F2.8、F5.6ともにG2の方がささくれ部のディティールがくっきりしていて、G1はディティールがわずかにぼんやりしているのが分かります。
レンズ周辺(手の辺り)も拡大してみましょう。
ピントを胴体に合わせていたので、手先はF5.6でもややピントが外れているため新旧の差がわかり難くなってしまっています。F5.6の木目によく注目してみるとこれもG2の木目の方がややくっきりしており、G1の方は木目がやや滲んでいます。
今回試した中だと、
180mmのレンズ中央部でディティールの差がわずかに感じられましたが、
他は「気のせい程度」にしか画質の差を感じませんでした。
色味はだいぶ違いがあって、個人的に新型(G2)の方が自然な色味で好みです。
③広角側の最短撮影距離0.3m
旧型ではAF使用時の最短撮影距離はズーム全域で0.85m(マニュアルフォーカスであれば広角側最短撮影距離0.27mまで可能)でした。新型ではAF使用時でも広角側最短撮影距離が0.3mになりました。
最近のTAMRONレンズは「寄れて当たり前!」って感じで、
どんなレンズでもほとんどハーフマクロ撮影ができるので便利ですね。
④より高速・高精度なAF
新型、旧型ともにリニアモータを使用したAFのVXDが採用されていますが、2020年発売の旧型はVXDが初めて搭載されたレンズでした。それから3年間、様々なレンズにVXDを搭載して技術が磨かれてきたため、新型のVXDは旧型よりも性能が向上しています。
TAMRONからは動体追従性の向上がアピールされていますが、実際に使用してみると最新カメラの瞳AFやAI-AFに最適化されたことで、AFが早く正確になっていることを体感することができます。
旧型のAFも通常使用で不便を感じることは無く、
一般的なシチュエーションでは新・旧の差はあまりわからなかったのですが、
あえて至近距離と遠方のピント合わせを繰り返すような意地悪をしてみると
新型の方が高速高精度になっていました。
あまり頻度は高くありませんが、ピント合わせがやや難しいシチュエーションでは
新型の優位性を感じることができると思います。
⑤TypeCコネクタを搭載し、Lens Utilityに対応
これは最近のTAMRONレンズで標準採用されている機能で、レンズとPCを接続することでボタンへの機能割り振りなどレンズのカスタマイズや、ファームウェアのアップデートが可能です。
また、Lens Utility Mobileにも対応しているため出先でもスマートフォンを使ってレンズカスタム内容を変更することができます。
新型のデメリット
スペック面では向上した点しかなく、完全に旧型の上位互換となるレンズですが、手振れ補正機能などを搭載したためにレンズわずかに大きく重くなった(45g)こと、そして価格が2.4万円ほど高くなってしまったことがデメリットと言えるでしょう。
結論、新型を買うべきか?
旧型(G1)と新型(G2)を比較してみて「今から買うなら新型と旧型どちらにすべきか?」「すでに旧型を持っているけど新型に買い換えるべきか?」にお答えします。
ずばり、
今から買うなら新型!
すでに旧型を持っているなら急いで買い換える必要はなし!
中古の旧型でも良い。
です。
・70-200mmクラスのレンズを持っていない人が選ぶなら、新旧の差額は2.4万円程度なので、あらゆる性能が向上している新型(G2)を選ぶべきでしょう。
・すでにG1を持っている場合、200mmクラスでは手振れ補正がそこまで重要ではないことや光学性能の差がそこまで大きくないことを考えれば、G1を売却して差額を足してまで急いで買い換えるほどでは無いでしょう。「G1が古くなってきた」「どうしても手振れ補正が必要な撮影をする」など必要になってから検討すれば良いと思います。
・中古の旧型(G1)は10~11万円程度で購入可能です。70‐200mmクラスのレンズを所有しておらず新たに購入を検討している人で、「中古でも良いかな」と考えている人であればG1の中古も選択肢として有力です。
ただし・・・
旧型(G1)のレビュー記事でも書きましたが、この70‐200mmクラスのレンズでは「予算が許すならSONY純正70‐200mmF2.8GMⅡが圧倒的最強」です。
さらに、そもそも70‐200mmクラスが必要な人ってのもそんなに多くないと思います。
例えば、「子供の運動会で使いたい」そんなときに200mmクラスでは望遠側が足りません。最低でも300mmか400mm以上が必要なので、【TAMRON 50-400mm F4.5-6.3】などの方が良いでしょう。
逆に広角側も70mmでは汎用性が低く、室内での運用は厳しいです。それ以下の、例えば28‐70mmの標準ズームなどを一緒に持ち歩き、随時交換する必要があります。
この場合、同じくTAMRONの【35‐150mm F2-2.8】の方が広角側から望遠側まで汎用性が高く、これ1本で済ませることも可能です。少し大きく重いのがデメリットのレンズですが。
小型軽量を望むのであれば、解放F値が大きくなることを我慢すれば【TAMRON 28‐200mm F2.8-5.6】も1本で汎用性の高いレンズです。
このように、最近のレンズバリエーションでは望遠レンズの選択肢は70‐200mmクラス以外により使いやすい焦点距離がたくさんあるため、他のレンズとの組み合わせも含めて「自分には本当に70‐180mmが必要なのか」をしっかりと検討することが重要です。
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